ニューティナ
自分が巻き込んだのだと、賢い脳味噌がニュートをなじる。かつてあの街に立ち寄ったこと、動物たちを逃したこと、彼と、彼女たちと、出会ったこと。 「お願い、そんなことを言わないで」 なかったことにしないでと、泣きそうな瞳が縋る。癒えぬ傷と後悔、それでも今を望む彼女の強さが羨ましかった。クリジル
たとえば、と呟く声はまるで独り言のようでもあって、どう返事をしたものかクリスは迷った。迫りくる憐れな化け物たち。背中越しの彼女の声がやけに遠い。 「あなたを撃って、自分の頭を撃ったら」 きっと楽だわ。彼女の声はぶれない。銃声もぶれない。今さら銃弾で死ぬかな、と嘯くと彼女は諦めたように笑った。ニューティナ
もっと近くにいたいこと、触れたいこと、到底口にできぬ感情を持て余し、そわと彷徨わせたティナの視線を、彼が掬い上げるように捕らえた。 「君って結構口下手だよね」 「あなたにだけは言われたくない」 おおきな手のひらがティナの頭を包みこむ。ひどいな、と笑う彼が望んだ通りのキスをくれた。アルアニ
淀んだ空気が見るからに面倒臭そうで、鬱陶しい、と一蹴するとアルミンが余計にじめついた。面倒臭い。 「せめて慰めてよ」 「なんで」 「なんでって」 頬にキスでもすれば満足か。なんでも、と問答を諦めた男が身を寄せてきたので仕方なく抱きとめて、ぐしぐし頭を撫でるとアルミンが力なく笑った。ニクジュディ
ご機嫌取りにも飽きてきたと見えるキツネがやがて、わかったこうしよう、と粗末な交渉に出た。機嫌直したらキスしてやるよ、太々しくのたまう彼に不機嫌を全開にして、ええぜひ、と振り向くと普通にキスをされた。 「……皮肉なんだけど」 「知ってるよ」 だけど機嫌直ったろ、と彼は軽やかに笑った。