花いちもんめ
人探しの依頼が舞い込んだ。
退屈な書類仕事ばかりが続く日々、太宰などは平和で結構と思う存分羽を伸ばして国木田に踏まれたりもしていたが、書類にもデータにも社員たちが飽き飽きしてきたと見える頃、その依頼を持ち込んだのは探偵社が誇る名探偵、江戸川乱歩であった。
「女性を探してるんだよね」
加えてこの内容である。訊きたいことも確認すべきことも山ほどあるがどこから切り崩せばいいのか皆目見当がつかない、と社員全員が綺麗にフリーズを決め、ある意味壮観だな、と唯一よその感情に気を取られていた与謝野は冷静だった。
「――そいつは」
難題だ。沈黙の吹きすさぶ事務所に、ピー、とファクスの電子音がやけに間抜けに響いた。
「乱歩さんでも解決できないンだろ? 到底他の奴らに解けるとは思えないけどねェ」
「まあ単刀直入に云って無理だね。そもそも誰かに頼ろうなんざ端から思っちゃいないよ」
「はあ」
「外出ですか?」
「うわ!」
まだいた。動ける人間が。与謝野の動揺をよそに太宰が飄々と会話に混ざってくる。
「なんだい、吃驚させるンじゃないよ。誰が外出だって?」
「乱歩さんが」
「今目の前にいるだろ」
「流石は太宰、話が早いね」
「いいんだけどね、たまには脈絡ってモンを重んじたらどうだい」
話を進めるなら進めるでわかるように進めてほしい。
こめかみを押さえる与謝野に太宰がにんまりと笑って、乱歩さんの今日のスケジュールです、とようやく噛み砕いた。噛み砕くにあたって彼の表情がどうにも癪に障ったがこの際どうでもいい。
「調査に出るッって話かい」
「そう、つまり僕が依頼して僕が引き受ける。探偵社の柱たる僕が私情で社を空けるのもさすがに気が引けるからね、一応それらしい名目掲げとこうと思って」
「社長には?」
「許可もらってる。直帰とも伝えてある」
だろうな、という与謝野の心情をそのまま表すように、ですよね、と太宰が相槌を打った。こうなった場合の乱歩が止めて聞くわけがない。
「で、何しにきたんだい、そういう連絡なら電話で充分だろ」
「与謝野さんを借りに」
借りてどうする。
「――妾?」
「そう」
「まあ一人で進めるよりは合理的でしょうね」
「アンタが話を進めるな」
「社長にも云ってあるよ、だからわざわざ休みじゃなくて依頼って形にしたんだ」
なるほど、と与謝野は頭が痛くなってくる。
「だから付き合ってよ、与謝野さん」
このあたりになってようやく事務所が息を吹き返してきた。そんなわけで諸君怪我をしないように、と高らかに告げる太宰の頭をアンタがいうなと叩いて、与謝野はちらりと国木田を見やる。会話は耳に届いていたようで、社長が了承されているなら、と彼は書類を整えながら頷いた。
「それじゃ決まりだ」
さあ行こうと与謝野の手を取り、乱歩は振り返りもせずに事務所をあとにする。与謝野ははいはいと引っ張られてゆく。
江戸川乱歩が女性を探している。わざわざ時間をつくってまで。わざわざ与謝野を引きずり込んでまで。あの乱歩がこれほどまでに女性に執着を見せるとは、と与謝野はなんとなく嫌な予感がする。
***
酔って道端で潰れて介抱されてそのままホテルに雪崩れ込んだ、一晩きりの相手だという。
改まって聞くと覚悟していた以上にろくでもない話であった。
「名探偵ともあろうおひとが醜態晒したモンだね」
「僕のせいじゃない」
二日前である。給料日ともあって浮足立つ社員が、というより太宰だったが、たまには飲みに行きましょうと調査員をざっくり誘って遅くまで飲んだらしい。与謝野は先約があって断った。未成年たちは早々に谷崎に連れられて引き上げたというが、そうなると残る顔ぶれは乱歩と国木田と太宰となるはずで、そんな中で別段酒を好まぬ乱歩が悪酔いしたとなると事情は推して知るべし、いや推さずともわかるがどうせ太宰が悪い。
国木田は国木田で昨日は白い顔をしていた。いい大人がなにをやっているのだ。
「それで? なんで今日になっていきなり」
「いきなりというか、昨日はそういう気分じゃなかった」
「それが今日になって引っくり返ったのかい、まったく天才ッてのはわからないね」
まあねと乱歩は得意げに少し前を歩く。別に褒めてはいない。当てはあるのかと問うと、いちかばちか、と足取りとは裏腹に怪しい返答があった。
「博打とはまた酔狂な」
「まあね。とりあえず順番にいこう、まず帰る途中あまりに眠くて駅のベンチで休んだんだ」
「道端でなくてよかったよ」
「少し眠ってたのかな。気づいたら声を掛けられた、大丈夫かって」
「はあ」
「それで、僕その時どうしても帰る気分になれなくて、奢るから一杯付き合ってって」
近くのバーに。現時点でろくでもない情報しか出てきていない。へえ、と与謝野は曖昧に相槌を打ちながら彼の隣を歩く。
たしかな足取りで道を曲がった乱歩が、此処、と居酒屋の並びに鎮座するバーを指した。駅から少し外れた通りである。もちろん今は営業時間外で、扉にはクローズの札がかかっていたしメニューボードも背を向けている。
「まさか聞き込みなんて真似しないだろうね」
「嫌だよそんなまどろっこしい」
「そもそも此処での記憶はあるのかい」
なんとなく、と彼の答えは相変わらず頼りない。
「一杯飲んだ。何飲んだっけ」
「一杯ね」
与謝野は嘆息した。乱歩さんらしい、と空を仰ぐ。快晴とまではいかないがそこそこの晴れ模様。湿気の少ない軽やかな風。間抜けな現状がさらに間抜けに思えて気が滅入る。
ちなみに与謝野は覚えている。
誘ったのは乱歩のほうだというのに彼はアルコールのないミルクセーキを頼んだ。与謝野はモヒート。たしかに頼んだのは互いに一杯だけで、一時間もいなかった気がする。最終そろそろだね、と列車に乗らぬ彼がわざわざ与謝野の時間を気にして、結局それが会計のきっかけになった。
「一時間くらいいたかな。で、店を出て」
そうだ、覚えている。のろのろと店を出たところでふと名残惜しくなったのだ。駅までの道、その一歩を躊躇した一瞬だ、乱歩が駅とは異なる方向に顔を向けて与謝野の手を取った。すべてを見透かしたように、与謝野の手を引いた。
「――あっち」
記憶と重なるように、彼の手が重なる。
は、と与謝野は顔を上げた。場違いに長閑な天気の下、うすらと開かれた彼の翡翠色はあのときと同じ光をともしている。まさか、と与謝野は身を強張らせる。
「乱歩さん」
「そのまま帰るのもしっくりこなくて、駅と違うほうを歩いた。大体の空気でわかる、ひとの流れとか、ひとの種類とかでね」
得意の推理か。推理であってくれ。願う与謝野は抗うきっかけを見出だせずに手を引かれるまま彼のあとを歩く。あの時と同じ道。小さなバーやダイナーの隙間を埋めるようにホテルの看板や料金表が息を潜めていて、ここまでくれば辿り着く場所もあの夜と同じに違いない。
「こういう場所にくればいくらでもホテルはある。あれこれ選り好みするのも億劫だ、ぱっと見てあまりごてごてしてなくて清潔感のある――」
乱歩は躊躇う与謝野の引力を完全に無視している。ふたつほど店を通り過ぎたところで、ああ、と彼は足を止めた。
「ここだね」
そうだ。ここだ。与謝野は声が出ない。
入口を庇うように作られた塀にホテル名と利用料金が洒落たフォントで掲げられていた。彼は一瞥もしないで塀の内側へと足を進めていく。ドアまで大した距離はない。どうしよう、と与謝野は彼の手を引く。
「――乱歩さん」
「ああ、心配しないで、取って食おうなんてつもりはないよ」
どの口が言う。
引いたはずの手を引き戻されて、拒絶する勇気も真相を訊く勇気も持てぬうちにあっという間にドアをくぐってしまった。平日でしかも昼前、空き部屋のランプはあちこち灯っていて、乱歩はさっさとパネルから部屋を選んで受付に回る。おそらくだがあの日と同じ部屋であろう。部屋に至っては与謝野も覚えていない。
「乱歩さん、待っとくれ、なんで――」
「なんでって僕の台詞だよ。云ったでしょ、心配しないで」
受付でいくつかのやりとりと会計を済ませて乱歩が振り返る。財布なんて持っていたのか。逸れる思考を引き戻すように彼が部屋の鍵を掲げて、此処じゃ何だし、と笑えぬ台詞を吐いて笑った。
「答え合わせといこう」
部屋は四階である。
エレベータの中でどんな顔をしていればいいのだ、と与謝野は頭が痛い。
***
部屋に入るなり乱歩はソファにどっかり凭れて、気まずそう、と人の気も知らずに笑った。ソファはひとつ、二人掛けではあるがこの状況で彼の隣に座る度胸はなく、与謝野は身の置き場がわからず狭い部屋に立ち尽くした。
「――まあ、結論から云うと僕は覚えてる」
「だろうね」
「だけど君も覚えてたんだからおあいこだ。全部覚えてるわけ?」
与謝野は少し考えてから、たぶん、と頷いた。駅前でぐったりしている名探偵を見かけて声を掛けた。誘われるがままバーで飲んでそのままホテルに入った。乱歩に声を掛けた時点で与謝野は酔っていたし、これから彼との関係をどうするかなんて考えていなかった。というか、考えないようにしていた。
「騙しきれると思ってたの」
「鋭意努力はしたさ」
「力及ばずだね。というか君がさっさと云ってくれたら話は早かった」
「一晩きりの相手は妾だッて? 乱歩さんが覚えてないんじゃこじれるだけだ」
少なくとも今まで違えずにきた彼との関係である。それを今さら、相手の記憶も怪しい一晩に縋ってぶち壊すなどどうかしている。
ふうんと乱歩が鼻を鳴らした。まるで他人事のような温度がいたたまれず、乱歩さんこそ、と与謝野は苦し紛れに切り返す。
「乱歩さんこそ覚えてたくせに何でこんな真似」
「わからない?」
わかるか。ただでさえ思考の読めぬ男である。
だよね、と含むように笑った乱歩がおもむろに立ち上がって、馬鹿みたいに立ち尽くす与謝野との距離を詰めた。しくじった。逃げそびれた。鈍い脳が判断をくだすよりもよほど早い段階で、乱歩が与謝野の腕をとらえていた。
「――君が、どういう顔するかなって」
気になって。
かっと血の上る感覚がした。
ないまぜになった感情が一息に押し寄せてきて、喉元につかえた無力な言葉を焼き潰す。彼に利き手を掴まれていなければ与謝野はおそらく彼の頬を張っていた。羞恥か。苛立ちか。もしかすると彼はこの反応を予測して腕を取ったのかもしれない。
「……そいつはずいぶん悪趣味なことだ、暇潰しくらいにはなったかい」
「は? だれが好き好んでこんなことするのさ」
「だれって」
「黙っていなくなったのは君だ。なにも云わなかったのも、関係ないふりをしたのも」
「それは」
たしかにそうだ。あの日、与謝野はたしかに乱歩から逃げたのだ。
起きたとき彼はまだ眠っていて、どうする、と与謝野は重たい頭で懸命に考えた。必要なことや余計なこと、いろんなところに考えを巡らせて、起こすべきか起こさぬべきか決めかねている矢先に彼の携帯が鳴った。静かな部屋に着信音がやけに大きく響く。うん、と乱歩が呻く。止まぬ着信音、止めるにしたって出るわけにもいかず、鬱陶しそうにしている彼はいつ起きてもおかしくない状態で、与謝野は混乱した。混乱を極めて、結局逃げた。
問題はなかった。ホテルは前払いで時間もある。残していく彼も件の着信で遅かれ早かれ起きるだろう。そろりと身支度を整えてホテルを出て、早朝の陽射しが二日酔いの頭痛に辛かったことを覚えている。
「――だって、こんなのは違うだろう」
「違う?」
いっそすべて忘れていられたらどれほど楽だったろう。
間違いと判っていながら触れた肌や体温を思い出そうとしている自分がいて、そうして上手く思い出せぬ自分に辟易して、矛盾ばかりの理性と感情がいまだにあの夜に囚われたままでいる。
「じゃあ訊くけど正解なんてあった? 仮にほんとうに僕が覚えてないとして、誤魔化しきれたとして、今まで通りにいられたと思う?」
「見くびってもらっちゃ困るよ、妾だってもう大人だ」
「ふうん、そのくせ僕が女性を探してるって聞いて嫉妬はするわけ」
ああ、と与謝野は天井を仰いだ。ああこの男ほんとうに最悪だ。追い込むばかりで逃げ道のひとつもくれず、これ以上どうしろというのだ。
かたくなに守ってきたはずのものがぼろぼろと崩れてゆく。彼との関係。彼との時間。違うと否定するタイミングはすでに説得力をなくし、縋る言い訳も見つからずに与謝野は途方に暮れた。
「ちがう、だって、妾は――」
「僕が執着する女性に、いもしない女性に、君は嫉妬したんだ。自分から逃げたくせにね」
「乱歩さん」
「まったくもって莫迦莫迦しい」
乱歩が一歩踏み込む。思わず後退った分を埋めるように彼は容赦なく迫ってきて、さらに足を退かせたところにベッドがあった。与謝野は小さく悲鳴を上げる。足を取られてバランスを崩して、伸し掛かってきた乱歩を受け止めきれずに縺れ込むようにベッドに沈んだ。
「乱歩さ」
「先に嫉妬したのは僕のほうだ」
「は?」
抗う体を抑え込まれて、それだけですでに手一杯だと言うのに彼はさらに新しい情報まで放り込んでくる。一度落ち着かせてほしい、と与謝野は藻掻きながら混乱していた。
「な、にを、云って」
「そのままの意味。あの夜から僕はずっと顔もしらない誰かに嫉妬してる」
「誰かッて……」
わからない。困惑するばかりの与謝野をじっとりと見下ろして、あの日、と乱歩は低い声で問う。
「あの日、だれと飲んでたの」
「――……は」
ぐるりと脳みその空回る感覚がした。
あの夜。乱歩の指す時間がどうやら二日前、彼に声をかける前らしいと数秒経ってようやく思い至った与謝野である。乱歩は答えがないことをどう捉えたか、険しい目元をさらに剣呑にして与謝野を見下ろした。
「僕に声かけた時点で君は酔ってたし、酔ってるにしたっていつもの君ならさっさと帰るように云ったはずだ。それでなくでも僕はあんな状態だったし」
「あの」
「そんな男と一杯付き合うどころかホテルだなんて正直どうかしてる。正気をなくすほど酔ってるようには見えなかった、となれば」
ほんの一瞬言いづらそうにして、たとえば、と乱歩が言葉を絞り出す。
「たとえば、それまで飲んでた誰かとの時間が名残惜しくて、人肌恋しかったとか」
言うなり名探偵は目を逸らしてしまった。
なるほど、と与謝野は口を閉ざす。結論から言うと的外れもいいところだが、頭が良すぎるあまり的外れという概念を持たぬ男は真剣そのもので、なるほどそういう考え方もある、と与謝野は他人事のように彼の仮説に思いを馳せた。
「……人を、ずいぶん軽い女と思ってるようだけど」
「そういう話じゃない」
「社長だよ」
え、と乱歩が無防備に声を取りこぼした。
「社長と飲んでたンだ、福沢さんもそっちの誘い断ってただろ」
「は? ふたりで?」
「酒飲みには酒飲みのペースってモンがあるんでね」
死人が出る。言外に太宰引率の面々を示すと乱歩はなるほどという顔をした。少なくとも太宰の無茶振り程度についていけぬようではまだまだだ。
「帰りに乱歩さんを見つけたのはほんとうに偶然だった。乱歩さんの云う通りそのまま帰らせるつもりだったよ、だけど」
「何」
「……アンタが、奢るだなんて云って女性を誘うなんて知らなかった。なんだか無性に惜しくて」
馬鹿な女と笑えばいい。
ろくなことにならないことはわかっていた。本当ならその時に腹を括るべきだったのだ。呑気に笑い合える彼との関係、密やかに息づく彼への感情、選ぶ覚悟も捨てる覚悟もその時に据えなければいけなくて、それでも与謝野はそのどちらも手放したくなかった。
今まで通りでいたかった。
けれど彼に気づいてほしかった。
いくつもの勝手な感情を持て余して、あの時も今も中途半端なままここにいる。手段はどうであれ今こうして向き合おうとしてくれている乱歩に対して、それはあまりに不実な気がした。
「――ごめんね、乱歩さん」
今さら謝ることが正しいのかもわからない。
乱歩はしばらく沈黙してから、ばかだね、と息を吐いた。
「君は莫迦だ」
こつと額を合わせて、乱歩が噛み締めるように呟く。本当にばかだ。与謝野も自覚していた。
寄せられた唇にそろりと目を伏せる。触れた唇。触れる体温。記憶から抜け落ちた優しい熱を改めて知り、忘れることを望みながらこの瞬間に焦がれていた自分を思い知る。本当にばかだ。与謝野は無性に泣きたくなった。
「……与謝野さん」
「うん」
掠める吐息が熱い。かすかに唇を離した乱歩が、最後にひとつ、と至近距離のまま囁いた。
「おとといだけど」
「うん」
「君寝ちゃってなにもしてないから」
「――は?」
与謝野は目眩にも似た感覚を味わった。
覚えてないと白状すると乱歩はだろうねと嘆息して、結構な生殺しだった、と愚痴る。さしもの与謝野も二の句が継げない。
「つまりまだ引き返せる。なかったことにするなら今だけどどうする?」
「どうって……、というか念のため確認するけど」
「何? これ以上の生殺しは御免だし仕事ふけた身でどうこうとか云う気なら聞かない」
「なら黙る」
「うん」
応じた乱歩が与謝野の額に口付ける。手を伸ばすと乱歩はその手を取ってくれて、引き返しようのない現実を突きつけながら彼は迷うことも先に行くこともしなかった。小狡い光を翡翠色にともして、はじめからだ、と乱歩は目を細める。
「はじめから逃がす気なんてなかったんだ」
こどものようなわがまま。大人ぶった執着。まんまと彼に捕らわれて、けれどそれも思えば最初からだ。
するりと頬を寄せた彼が耳殻から首へと丁寧に唇を寄せる。彼の吐息をじかに感じながら、これはたしかに忘れるはずがないと彼いわくの生殺しを反省して、そんな矢先にそういえばと与謝野は思い出した。
「そういえば一日置いたのは何だったンだい」
「それ今聞く?」
乱歩が大したことじゃないとはぐらかす。寄せられた唇を牽制するように顎を引くと、二日酔い、と焦れたような返答があって、あれだけ焦がれたはずのキスを笑いながら交わす羽目になった。
(2019/05/30)
ミルクセーキはともかく与謝野が記憶怪しくするなら甘い酒じゃだめだよなみたいなどうでもいいところを除けばさくさく書けた話でした。太宰はおおよそ察してる。